やることは、ただひたすら金を使うことだけ。

<br>どこにも寄りかからない真性の無頼な時間がここにある。

<br><br>給料日のサラリーマン。

懐には20万弱の金がある。

<br>会社帰り、男は地下鉄丸ノ内線で新宿に出る。

<br>ゲーム・センターで金を使い、パチンコで使い、<br>飲み屋を何軒もハシゴし、誘われるままに風俗店に行き、<br>一晩で彼はすべての給料を使ってしまう。

<br>憂さを晴らしているわけでもないようだ。

自暴自棄でもない。

<br>金があり余っているわけでもない。

病的でもないらしい。

<br>男は金を払う。

なぜなら金を持っているから。

<br>新宿とはそういう街だから。

<br>感情にも意味にも事件にも寄せず、新宿を描ききった稀有のハードボイルド小説。

<br><br>【著者】<br>片岡義男:1939年東京生まれ。

早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。

75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。

ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。

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